ホテルの従業員がボイラー室などでの作業中にアスベストにばく露し死亡した事例
※集団訴訟の場合は、全ての原告の認容合計額を記載しています。
概要
この事件は、ホテルの従業員であったCさんが、悪性胸膜中皮腫という重い病気によって亡くなったことについて、Cさんの遺族がそのホテルを経営する会社に対し損害賠償を求めたものです。
亡くなったCさんの遺族は、Cさんが悪性胸膜中皮腫を発症したのは、ホテルを経営する会社が作業場でのアスベスト対策を怠ったためだとして、訴訟を起こしました。
しかし、札幌地裁は遺族の請求を棄却したため、遺族はこの判決に不服があるとして控訴しました。
裁判のポイント
Cさんのホテルにおけるアスベストばく露歴
- Cさんは、昭和39年4月に被控訴人に採用されて以来、石綿を吸入する可能性の高い作業に従事したことが認められ、作業中に限らず、石綿の吹き付けられた壁面との接触などにより、アスベストばく露の可能性があった。
因果関係の証明
- Cさんの病気がホテルでの勤務によるアスベストばく露と直接関係があるかどうかが争点
- 遺族側は、労働災害として認定されたことを根拠として提示
- ホテル側は、Cさんが他の勤務先でもアスベストにばく露していた可能性があると主張
安全配慮義務の有無
- ホテル側がアスベストの危険性を予見し、適切な対策を講じる義務があったかどうかが争点
- 遺族側は、ホテルが安全配慮義務を怠ったと主張
- ホテル側は、昭和62年ころまで、アスベストが人の生命・健康に対する重大な影響を与えるものであることを認識することはできなかったと主張
裁判所の判断
裁判所は、札幌地裁の判決を取り消し、遺族に対する損害賠償として、控訴人Aさん(Cさんの妻)に約1,897万円、控訴人Bさん(Cさんの長女)に約1,338万円を支払うように、ホテル側に命じました。
裁判所は、Cさんが行っていた作業には、アスベストを含む材料が使われており、その作業中にアスベスト粉じんを吸い込む可能性が高かったことを認めました。
さらに、天井裏の配管修理作業でも、アスベストが吹き付けられた壁や天井と接触し、粉じんを吸い込むリスクがあったとしています。
さらに、ホテル側が適切なアスベスト対策を講じていなかったことも問題視しました。
※本ページで紹介している事例は、当事務所が実際に対応したものではありません。