造船所などでの作業中にアスベスト粉じんにばく露し、肺がんなどを発症した事例
※集団訴訟の場合は、全ての原告の認容合計額を記載しています。
概要
原告は、管工事の設計・施工や空調環境調和設備工事、冷暖房設備の設計・施工などを行う会社で働いていました。その原告が、肺がんと振動障害を発症したことについての訴訟です。
原告はそこでの作業中に、大量のアスベスト(石綿)粉じんにばく露し、さらに長時間の振動作業を行っていたため、病気を発症したと主張しています。
そして、この病気が会社の不法行為や安全配慮義務違反によるものだとして、損害賠償を求めています。具体的には、会社に対して総額3,300万円の賠償金と、発症日からの遅延損害金を求めています。
裁判のポイント
原告の病気の発症と会社での作業の因果関係
【原告の主張】
- 造船所での作業中に大量のアスベストを扱い、粉じんにばく露した
- 石綿含有のパテを使った作業や、カーテンやダクトから飛散する粉じんにもばく露した
- 長時間にわたり振動工具を使った作業に従事し、手や腕に影響を受けた
【被告の主張】
- 原告は保温工事だけに従事していたわけではない
- アスベストのカーテンがあったとは考えにくい
- 原告の振動作業の従事時間は少なく、長時間作業していたという事実はない
被告らの安全配慮義務違反
【原告の主張】
- アスベストや振動工具の危険性を知っていながら、適切な安全対策(マスクの配布や着用指示、振動障害の予防策)を怠った
【被告の主張】
- マスクの配布や着用指示は行ったが、原告が従わなかった
- 防振手袋を配布していなかったことは認めるが、それ以外の安全対策は行った
裁判所の判断
裁判所は、原告が長期間にわたりアスベストや振動作業にばく露し、それが肺がんと振動障害の原因となったと認定し、2,772万円の賠償金と年5分の割合による遅延損害金支払いを命じました。
具体的には、原告が昭和46年から昭和47年にかけて造船工場での保温工事でアスベストを取り扱い、その後もFRP製品(繊維強化プラスチック)製造工程でアスベストを含むパテの研磨や調合を行い、アスベスト粉じんにばく露していたと判断されました。また、長期間にわたり振動工具を使用した作業に従事し、これが振動障害の原因となったことも認められました。
被告らは、アスベストや振動工具の危険性を認識しながら、適切な安全対策(防じんマスクの配布や安全教育の実施、防振工具や手袋の支給)を怠り、予見できた危険性に対して適切な措置を取らなかったと判断されました。
※本ページで紹介している事例は、当事務所が実際に対応したものではありません。